2010年7月13日火曜日

ある一日

朝起きると毎日違う天井がある。今日起きたのは、ボリビアの安宿だったことを思い出す。当たり前のように日が入らない部屋、少しぼっとしながら、シミだらけのシーツから体を起こす。枕元からガイドブックを引き寄せ、今日することの交通手段の確認をとる。

外で、スペイン語が聞こえる。音楽のように聞き流していると、よく意味が分からないが、どうやら隣のカップルが部屋を出るらしい。自分も空腹を感じ、街に出ることにする。

この街は特に見るものはないが、本当に巨大な市場がある街。市場というと、ある程度仕切られた空間にあると思いきや、ほぼ街全体が市場で、道は道路に仕切られているのではなく店に仕切られている。昨夜は、その中をむやみに歩きまわり、道に迷ってしまった苦い経験を思い出した。地図が役に立たない土地なのだ。

ホテルから出ると、裏寂しい通りに出る。市場に出店するため、地方からやって来る人用の宿なので、表は非常に寂しいところに立っている。入り口をでて左に向かうと、バスターミナルがあり、その正面が市場の入口になっている。道の辻辻にはオレンジジュース屋がある。オレンジをその場で2、3個絞ってくれて飲ましてくれるボリビアではメジャーなオバチャン達。オレンジジュースをペットボトルに詰めてもらい20円。それから近くのパン屋に行き、焼きたてはどれか聞き、それを買う。
まだ温かいパンと、しぼりたてのオレンジジュース、昨晩買ったバナナを口にほおばり、家具屋の前に腰をおろし、行き交う人を見ながら朝食を食べる。家具屋のおっちゃんといつもの、どこからきたのか、何人だというような世間話をする。のんびりとした会話、一日の始まりのタバコ、朝のきりっとした空気の中、日差しが暖かくい心地がいい。

お腹も満たされ、一度ホテルに帰り、今日の荷物を準備する。セカンドバックに、コンパス、水、ビスケット、地図、ジャンパー、メモを放り込み肩にかける。今日必要な、小額紙幣を右の前ポケットにねじ込み、左の前ポケットには、タバコと鍵、ダミーの財布をねじ込む。

ホテルのおばちゃんに今日も泊まることを伝え、ホテルをでて、左側のバスターミナルの前に向かう。この地方ではコレくティーボという、乗合バンが数分ごとに入れ替わり立ち代り止まっている。その一台に声を掛け、自分の行きたい場所に行くのかを確認して値段交渉をする。交渉が終わったら、バンに乗り込み、人が埋まったら出発する。

バンは街をでて、西へ西へ進む。終点まで乗ると、そこでまたバンを探し乗り込む。
窓から見る風景は、どんどん田舎になっていく。たまに食堂があり、農場があり、町工場が連なっている。

バンは、小さな教会と中央広場を中心にした集落にたどり着く。終点まで乗ったのは、自分とひとりの女性だけ。街は静まり返っているが、だからといって、寂しいかんじはなく、老人が中央広場のベンチでのんびりしているようなゆっくりとした空気が流れている。

お目当てのものを見つける前に、小腹が空いたので、近くにあった屋台の揚げナンを食べる。適度な歯ごたえと、まんべんなくかかったはちみつが非常に美味し逸品。食べきれない分を袋に入れてもらい、おばちゃんにお店の場所を教えてもらう。中央広場から少し入ったところにある食堂。

すでに先客が3人いて、その人達が入って来いという。何か飲んでいるから、「それはナンだ」と聞くとそれが自分が探し求めているものだった。それはグアッポというものである。グアッポとは、簡単にいうとシャンパンのようなものでワインになる一歩手前の、アルコール飲料だ。糖度が高く、微炭酸なのでごくごく飲める。ワインだからといって、グラスで飲むのではなく、バケツに波波と注がれ物をココナッツの入れ物ですくって、そのまま飲む。

乾いた空気に、冷えたグアッポの盃を一気に飲み干すと非常に美味しい。微炭酸の爽やかの喉越しと、適度なアルコールが胃の中で踊る。すくっては飲み、すくっては飲み。どんどんバケツの中からグアッポが消えていく。一緒に飲んでいる3人はこの村の若者で、酔っていることもあり非常に陽気だ。おたがい、酒を勧めあい、世界共通の女の話に花を咲かせ、どんどん飲む。4人で4リットルぐらい飲み干したあと、結婚式を終えた家族が入ってくる。なぜかそのお祝いに自分たちも混ざり、またグアッポで祝杯を上げる。

非常に楽しい時間はあっという間に過ぎる。あまり酔いすぎると危険なので
そこでお暇をする。みんなで写真をとり、後ろ髪を惹かれながろ、バンに乗り込む。

つづく

0 件のコメント:

コメントを投稿